NPO設立にあたって

  • 移植への理解を求める会幹事
  • えひめ移植者の会会長
  • 野村 正良

患者から見たレストア(修復)腎移植

 今、論議を呼んでいるレストア(修復)腎移植、いわゆる病気腎移植は、ドナー(臓器提供者)に恵まれない移植希望患者を一人でも多く救おうと、宇和島徳洲会病院の万波誠先生とそのグループの先生方が、やむにやまれぬ思いから進めてこられました。
おかげで私を含め、命を救われた患者さんらは、みな元気になり、先生方に大変感謝しています。私はネフローゼ症候群の患者さんから摘出した両腎の片方をいただき、8年目になりますが、腎機能はまったく正常で、健康そのものです。レストア腎移植のすばらしさを、身をもって感じています。
 それにしても、私たち患者の声に一切耳を貸さず、レストア腎移植をかたくなに否定する日本移植学会や厚生労働省の姿勢は理不尽で、まったく理解に苦しみます。両者は、日本の移植医療を本気で進める気があるのだろうかと不信感が募ります。
 特に、誤った医学的知識をもとに「とんでもない医療だ」「人体実験だ」などと、口を極めて万波先生を非難してきたことは、アンフェアで悪質としか言いようがありません。

▽全米移植学会で表彰

 レストア腎移植は、既にオーストラリアの病院でも実施されており、日常的医療として大きな成果を上げているほか、米国の病院でも取り組みが始まっています。また万波先生らがまとめたレストア腎移植の論文は今年1月、フロリダで開かれた全米移植外科学会でトップ・テンに選ばれ表彰されるなど、海外の移植関係者から「画期的な医療」と賞賛されています。
 しかしながら、日本移植学会をはじめとする日本の移植関連学会は、予断と偏見に満ちた調査によって、レストア腎移植を「現時点では医学的妥当性がない」と結論づけ、全面的に否定する声明を発表しました。
 この移植の有効性と安全性を裏付ける多くの症例が明らかになっても、その考えを一切変えようとはしません。
 学会の見解を踏襲する厚労省も、臓器移植法の運営方針の一部を改正し、修復腎移植については臨床研究の道を残すものの、一般医療としての実施を禁止しました。
 厚労省はさらに、この移植手術を「特殊な医療で保険診療の対象外である」と断定し、移植を実施した市立宇和島病院と宇和島徳洲会病院に診療報酬の返還と保険医療機関の指定取り消し、万波先生らには保険医の取り消しという厳しい行政処分を実施する方針を打ち出しています。

▽患者救済の視点欠如

 移植を率先して進めるべき学会と、国民の健康を守り患者を救済することが使命であるはずの厚労省が、新たな可能性を持つ修復腎移植を、おざなりな調査によって全面的に否定したことは、まったく信じられないことです。
   両者には患者を救済するという視点がまったく欠如しており、修復腎移植の全面的な否定は、移植を待つ患者の切実な願いを踏みにじるものと言えます。
 また、厚労省が修復腎移植を「保険診療の対象外である」と言っていることは、大変おかしな話です。万波先生らが第1例を手がけるときに、当時の愛媛の移植コーディネーターが、保険診療の対象になるかどうかを、厚労省に問い合わせたところ、「一般医療と変わらず、保険適用できる」との回答があったことが明らかになっています。
 したがって、万波先生らは、保険適用の対象として正当な手続きのもとに、レストア腎移植を進めてきたのです。
 これまで保険適用が認められてきた経緯があるにもかかわらず、学会が否定をしているからといって、厚労省が手のひらを返したように、今になって「特殊医療で保険適用外である」と断じることが、いかに根拠のない不当なものであるかは明白です。
 さらに、レストア腎移植は、万波先生のグループだけでなく、全国の病院で過去に70例以上実施されていることも、明らかになっています。その意味で、学会が万波先生らの修復腎移植だけを非難するのも、理屈の通らない話です。
 こうした理由からも、レストア腎移植は、学会幹部が非難するような「とんでもない医療」でも「人体実験」でもないのです。

▽時代遅れの医学的常識

 学会幹部らが、レストア腎移植を否定する根拠としている医学的常識は、現代ではもはや通用しない時代遅れのものばかりです。いまだに、それを振りかざしているのは、学会幹部らが勉強不足で無知なのか、知っていながら嘘をついているのか、そのどちらかです。前者なら実に恥ずかしいことだし、後者なら犯罪行為に等しいものです。
例えば、「がんの腎臓を移植するのは禁忌中の禁忌。移植すれば免疫抑制剤を使うので、必ず病気が再発する」と彼らは言っています。私たち素人が聞くと、いかにも、本当のように聞こえますが、事実はそうではありません。  
 4センチ以下の小さな腎臓がんは、切除すると再発の可能性は非常に低く、さらに他人に移植すると、免疫機構ががん細胞を抑え込んでしまうので、まず再発しないということです。そのことは、これまでの国内外のレストア腎移植の実績が証明しています。
 また「他人に移植できる腎臓なら、本人に戻すべきだ」とも言っていますが、これも、現実を無視した発言です。摘出した腎臓を元に戻す手術は非常に難しく、8時間もかかるそうです。そこで、もう片方の腎臓が健全であれば、本人が戻すのを拒否するケースが多く、8割以上が捨てられているということです。
 これらのことを考えても、学会と厚労省が、いかに誤解と偏見によって万波先生らを中傷、誹謗しているかが、お分かりいただけると思います。 
 こうした学会幹部の誤った発言を、マスコミの多くは何のチェックもなく垂れ流し、万波先生らのバッシングの急先鋒となってきました。民衆の味方であるべきマスコミが、権力側の宣伝機関と化し、患者の声に真剣に耳を傾けてこなかったことは、まことに情けない限りです。

▽他人事の全国患者団体

万波誠医師

 また全国の患者団体の態度にも首をかしげます。日本の移植関係五学会が修復腎移植を否定する見解を発表すると、それをコピーしたような声明を出し、万波先生らを非難するだけで、レストア腎移植の問題を真剣に考えようとはしません。
 患者団体なら「一人でも多く患者が救われるよう、レストア腎移植の可能性を検討してほしい」と訴えるべきです。それなのに学会や厚労省に同調し、「万波先生のやり方は容認できないから、修復腎移植は認められない」などと、他人事のように言っていることに、私は大きな憤りを感じます。
 患者団体の幹部は、患者代表であることを忘れ、学会と同じ視線でこの問題を見ていることに気づかないのです。
 患者団体がこぞって、万波先生とレストア腎移植を批判しているように、国民に思わせた責任は重大です。
 こうしたなかで、私たちは、万波先生とグループの先生方を支援する「移植への理解を求める会」を立ち上げ、署名運動や講演会を通じて、修復腎移植の妥当性をアピールし、その早期実施(再開)と、万波先生や病院の医療活動継続保障を、厚労省に訴えてきました。
 しかし、学会も厚労省も、相変わらず万波先生らの批判と修復腎移植の禁止を唱え、態度を変える様子はまったくありません。
 ただ、私たち患者にとって、大きな味方が現れました。学会と厚労省の対応に疑問を抱く与野党の国会議員の先生方です。「修復腎移植を考える超党派の会」を立ち上げ、80人の参加のもとに、この3月、「患者を救うために修復腎移植を認めるべきだ。万波先生や病院の処分も、明確な理由がない」との見解をまとめました。
 この超党派の会の行動によって、厚労省は宇和島市の2病院と万波先生らに行政処分をするための聴聞会を延期しました。開催の見通しは今のところ、立っていません。こうなると、万波先生らと病院の行政処分は、軽々にはできないだろうし、レストア腎移植もいずれ、一般医療として認めざるを得なくなるだろうと、私たちは期待感を強めています。

▽遅れている移植医療

 ところで、万波先生らがレストア腎移植を手がけるようになった背景には、日本の移植医療が大きく遅れていることがあります。
 現在、慢性腎不全で透析生活を余儀なくされている患者は全国で26万人にも上っています。最近の統計によると、毎年3万人が新たに透析を導入し、2万人が亡くなっています。このため毎年1万人ずつ透析患者が増え続けています。
 このうち、1万2千人前後が腎移植の希望登録をしていますが、国内ではドナーが極めて少ないため献腎(提供される死体腎、脳死腎)による移植は、年間160例程度しかなく、平均16年は待たないといけないという状況です。
 しかも、透析を始めた人の10年後の生存率は40%ですから、大半の人が移植を待たずに亡くなっていることになります。
 最近は、糖尿病を悪化させて慢性腎不全(糖尿病性腎症)になる人が急増しており、その予備軍は全国に2千万人に上るとも言われています。腎臓病は、もはや一部の人だけの病気ではなく、国民的な病気になりつつあります。したがって、他人事ではなく、自分や家族の問題として、考えなくてはならない時期に来ています。
 レストア腎移植は、治療のため他の患者さんから摘出し捨てていた腎臓を修復して使うわけですが、これらの移植腎は、学会やマスコミ報道で「病気腎」と呼ばれてきました。そのために、いかにも病気を持った悪い腎臓を、移植しているようなイメージでとらえられてきました。
 しかし、現実には患部を修復した腎臓で、しかも生体腎ですから、限りなく「健康な腎臓」なのです。むしろ、死体腎や脳死腎の方が傷んでいることが多く、病気腎に近いということです。このことを勘違いされないよう、私たちはレストア腎移植、または修復腎移植という言葉を使うことにしています。
 推計によると、国内では年間1万個前後の腎臓が摘出され捨てられており、このうち、2千個前後が移植に使えるとされています。ですから修復腎移植が容認(再開)されれば、移植のチャンスは一挙に10倍以上に増えることになるわけです。

▽ドナー不足解消へ期待

 レストア腎移植は、献腎移植と比べて、生着率も遜色なく、肉親間の生体腎移植と違って、健康な体に傷をつけることもありません。したがって家族間の葛藤もなく、万一、手術が失敗しても、医師も患者も気持ちが楽というメリットがあります。こうしたこともあって、ドナー不足を解消する切り札として、大きな期待が寄せられているわけです。
 これに対し、学会は、万波先生らの修復腎移植について
  • 絶対禁忌であるがんの腎臓を移植してきた
  • 第三者のチェックなしに、密室で移植してきた
  • ドナーから腎臓を摘出した医師がレシピエント(患者)を選び移植しており、公平さに欠ける
  • 患者への説明が十分でなく、同意書を取っていない
  • 摘出する必要のない腎臓を摘出した
などといった理由を挙げて非難しています。
そのうえで、学会や厚労省は「万波先生らのやり方が悪いから、現時点では修復腎移植もは認められない」と主張しています。全国の患者団体も同じ論調です。
 私たちには、その反対理由がよく分かりません。仮に万波先生らのやり方に非があるとすれば、それらを改善すればよいわけであり、修復腎移植の医学的妥当性とは別問題であるはずです。つまり、学会や厚労省は、万波先生らを非難するために、反対のための反対をしているとしか、思えません。

 私たちは、学会や厚労省がレストア腎移植を正当に評価し、一日も早く日常的医療として定着させる努力をするとともに、万波先生らと宇和島市の2病院の医療活動の継続が保証されることを訴え、今後とも粘り強い活動を続けていくつもりです。

2病院

 患者にとって大きな希望の灯であるレストア腎移植の推進と、日本の宝である万波先生やグループの先生方の支援のために、皆さんのご理解とご協力を、ぜひお願いしたいと思います。

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